【2024年度・第7回】12月12日開催記録
- Yukiko Kinugawa
- 2024年12月16日
- 読了時間: 4分
更新日:1月14日
「人的資本経営研究コンソーシアム」の第7回研究会が2024年12月12日(木)に慶應義塾大学三田キャンパスにて開催されました。
1)罰ゲーム化する管理職~組織マネジメントのあるべき姿
パーソル総合研究所 上席主任研究員 小林 祐児様
今話題の本、『罰ゲーム化する管理職』の著者、パーソル総合研究所の小林祐児様をお招きして、現場目線での組織マネジメントのあるべき姿について、お話しをしていただきました。
最初に、管理職の抱える様々な課題についてデータをもとに教えていただきました。管理職などの負荷が高い層を深堀すると、「学びの時間が確保できない」、「付加価値を生む業務に着手できない」といった課題意識が出てくるようです。また、管理職の負担を増加させている主な要因は、「部下マネジメント」「新しい組織課題への対応像」「コスト削減要請」のようです。こういった課題が多いにもかかわらず、現在の現場管理職は、より少ない人数で・より大変な課題を・より低賃金で行うものになっていて、まさに罰ゲームというわけです。海外と比較した場合の日本の管理職意欲が低いさや、若者の昇進意欲のトレンドについてもご紹介いただき、管理職のなり手がいない状況についてより理解が深まりました。
「社内」にある管理職負荷の原因として、人事と現場管理職の課題意識の違いや、メンバーの働き方改革、管理職本人のマイクロマネジメント等があり、管理職負荷のインフレ・スパイラルが起こっています。「個人主義化した社会で、個人主義化した経営・人事が、強い個人を創りがたる」という構図に気付き、脱却することが必要だということです。
最後に、管理職の罰ゲーム化を止めるための4つのアプローチと事例についてお話ししていただきました。小林様のお話しを受けたディスカッションの時間には、自社の管理職・ミドルマネジメントの課題について、グループ内で共有していただきました。小林様、ご講演ありがとうございました。

2)自己決定理論の人的資本経営〜危険なやる気を避けて持つべきやる気をデザインする
スタンフォード大学 星 友啓様
続いて、スタンフォード大学オンラインスクールの校長先生で、慶應義塾大学特別招聘教授でもある哲学博士の星先生より、モチベーションについてお話ししていただきました。
モチベーション理論としては、古くからマズローの5段階欲求説やハーズバーグの二要因理論が有名で、かつては多くの企業が「高い目標設定と報酬」を取り入れてきましたが、アメリカではその結果、それぞれの時代において名だたる企業が倒産や売上減少、不正等を起こしてしまいました。また、評価システムもうまく機能しなかった事例があります。モチベーション理論に基づいて会社を経営しても結果は良くならず、これらの理論は、科学的エビデンスに乏しいと言わざるを得ないということでした。
星先生が着目しているのは、アメリカの心理学者であるエドワード・デシ(Edward L. Deci)とリチャード・ライアン(Richard M. Ryan)が提唱した動機づけに関する理論「自己決定理論」です。この理論の主な特徴は、2つのモチベーション(内発的モチベーションと外発的モチベーション)と、心の3大欲求(①つながり、②有能感(できる感)、③自発性(自分から感))です。内発的モチベーションはそれをやっていること自体で満足している状態、外発的モチベーションは報酬や罰で動機付けしているものです。外発的モチベーションが内発的モチベーションを壊してしまうことや、外発的モチベーションは短期的には強いが、長期的にはリスクが高いこと、また、内発的モチベーションを持続させるためには心の3大欲求が大事になること等について教えていただきました。
自己決定論の人的資本経営としては、「外発的動機づけを避けて、⼼の3⼤欲求による 動機づけを促す仕組みを作ること」が必要だということで、Googleや3Mの事例などについてもご紹介いただきました。
ご講演の後は、「外発的動機付けに傾いた仕組みはあるか?」、「どのように心の3大欲求を満たす仕組みに変えられるか?」について、グループごとにディスカッションをしていただきました。星先生、ご講演ありがとうございました。

3)参加企業様からの最終発表
この研究会も残すところあと2回となりましたので、これまで発表していただいていない企業様に、人的資本経営に関するお取組み内容や工夫していること、最近の変化などについて、順番に発表していただきました。
今回はNEC様、電通グループ様、日興アセットマネジメント様にご発表いただき、次回、残りの企業様にも発表していただく予定です。
12月とういうことで、研究会終了後には、大学内のザ・カフェテリアにて、忘年会兼懇親会を開催しました。登壇者の小林様や星様にもご参加いただき、大変盛り上がりました。ご参加いただいたみなさま、ありがとうございました。

次回、第8回は1月29日(水)に開催予定です。最終回は慶応義塾大学三田キャンパスを飛び出して、イトーキ様のオフィスにお邪魔して、オフィス見学からスタートします。
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