【2024年度・第8回】1月29日開催記録

　「人的資本経営研究コンソーシアム」の第8回研究会が2025年1月29日（水）にイトーキ本社にて開催されました。

１）ITOKI DESIGN HOUSE見学

　「オフィス投資は人的資本経営にきく」そうです！研究会メンバーのコーポレートコミュニケーション統括部の木塲様にお話しをお聞きした後は、次世代の働き方が体感できる「ITOKI DESIGN HOUSE」という名のイトーキの本社オフィスを見学させていただきました。小さなグループに分かれ、イトーキの社員さんが付き添ってオフィスの隅々まで案内してくださいました。

　実際に活き活きと働く社員さんたちの姿を間近で見学させていただくことができ、イトーキさんの提案する新しい働き方に感銘を受けました。単に仕事をする場所から、快適さや働き心地を何よりも大事に、コミュニケーションやアイデアが湧き出るような場にしようというこだわりを至るところに感じられる想像のはるかに上をいくオフィスでした。執務スペースのほかにも、瞑想ができるお部屋や、デシジョンルーム（役員会議室）も必見です。

　詳しくはぜひ、イトーキ様のWebサイトをご覧ください。

https://www.itoki.jp/special/designhouse/

　そして百聞は一見に如かず、ぜひ見学に行ってみてください。「オフィス投資は人的資本経営にきく」という意味が理解できます。イトーキのみなさま、素敵なオフィスを見学させていただき、ありがとうございました！

２）AIが組織に与える影響についての研究最前線　

慶應義塾大学 総合政策学部 准教授 清水　たくみ様様

　続いて、慶応義塾大学総合政策学部の准教授で、経営情報学がご専門の清水先生より、「AIが組織パフォーマンスに与える影響とデジタル時代の組織文化」についてお話ししていただきました。

　まず、生成AIと競争力についてアカデミックな観点から教えていただきました。AIは標準装備になるため、AIそのものは競争優位の源泉にはならないという意見もありますが、過去をさかのぼるとITの価値について経営情報学で似たような議論があったようです。2003年当時、ITはコモデティになるので、ITは競争優位にとって重要ではないと書かれた論考があり、AIと競争力の議論に重なる部分があります。生成AIと競争力について考えるうえで、過去のITの議論が参考になるのではとのことでした。

　次に、経営学関連分野におけるAI関連研究例について紹介していただきました。①コールセンターに生成AIを導入するとオペレーターの生産性が上がった事例や、②人間が出した研究アイデアと生成AIが作った研究アイデアでは、生成AIの方が新規性に関する評価が高かったという事例、③チェスプレイヤーとAIの協働の事例です。こうした事例から、人間の知的作業にもAIが波及しつつあることがわかります。ただ、これらの研究は個人を対象にした研究であり、組織レベルでは研究がそれほど進んでいないようです。

　清水先生は、日本企業の生成AIの活用状況やパフォーマンスへの影響について研究をされる中で、東証の上場企業に生成AIの活用状況についてサーベイを実施されたそうです。そして、その一部結果を共有していただきました。デジタル投資と組織パフォーマンスの関係について、リーダーシップや組織のアジリティなど様々な変数の影響があるとのことですが、中でも清水先生が注目しているのが組織文化とのことでした。組織内のデジタル文化度合いが高いと、生成AI活用と企業業績の間にプラスの関係性が見られた一方、デジタル文化度合いが低い場合はそのような関係性が見られなかったとのことでした。ビジネスモデルと人材戦略の連動をはかる人的資本経営にとって、生成AIをはじめとしたデジタル技術と組織マネジメントの融合が重要な論点になるようです。

　上場企業でも生成AIの活用はまだ発展途上のようですが、生成AI活用と企業業績の間にはプラスの影響があるので、組織内デジタル文化を醸成し、生成AIをうまく活用していく必要があることが分かりました。清水先生、ご講演ありがとうございました。

３）参加企業様からの最終発表

　この研究会も今回で最終回となりました。これまで研究会で発表していただいていない企業様に、人的資本経営に関するお取組み内容や工夫していること、最近の変化などについて、順番に発表していただきました。

　今回は、ブラザー工業様、ディーファイブコンサルティング様、東京センチュリー様、松井証券様、三菱UFJリサーチ＆コンサルティング様にご発表いただきました。

　最後の研究会になりましたが、3月6日はこれまでの研究会の成果を発表する公開シンポジウムの開催を予定しています。一般の方々もご参加いただけますので、人的資本経営に興味のある企業の方々はぜひご参加ください。詳細は以下のリンクよりご覧いただけます。

公開シンポジウムのご案内：こちら