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2026年度 第3回研究会 開催記録


 「企業価値に資する人的資本経営コンソーシアム」の第3回研究会は、2026年9月1日(火)に慶應義塾大学三田キャンパスにて開催されました。

研究会会場となった三田キャンパス東館
研究会会場となった三田キャンパス東館

プログラム①

「エビデンスで生産性を高めよう」

慶應義塾大学 総合政策学部 専任講師 佐藤豪竜先生

 

医療経済学や社会疫学を専門とし、働き方や健康、生産性の関係を実証的に研究する佐藤先生による講義です。講義では近著『働き方の科学』(ダイヤモンド社)を紹介したうえで、今回は在宅勤務に焦点を絞り、生産性に与える影響を国内外のエビデンスに基づいて解説されました。

 

佐藤豪竜先生
佐藤豪竜先生

 冒頭、日本で週1日以上在宅勤務をする人の割合は21%で、調査対象38カ国中最下位であることが紹介されました。一方で、企業が在宅勤務の廃止を判断する際、その根拠となるデータの読み方には注意が必要です。例えば、コロナ禍の前後で生産性を比べても、受注減など在宅勤務以外の影響が含まれる可能性があります。また、出社する人と在宅勤務をする人を単純に比べても、もともとの意欲や能力の違いが結果に表れているかもしれません。佐藤先生は、こうした「前後比較」や「単純比較」だけでは、施策そのものの効果を正確に捉えにくいと指摘しました。

 

 そこで紹介されたのが、対象者を無作為に介入群と対照群へ分ける「ランダム化比較試験(RCT)」です。中国の大手旅行代理店のコールセンターで行われたRCTでは、週4日の在宅勤務によって生産性が13%向上し、離職率は半減しました。実験後、働く場所を本人が選べるようにすると、生産性の向上幅は22%に拡大しました。通勤時間の削減や静かな執務環境に加え、自分に合った働き方を選べる裁量が成果につながったと考えられます。

 

 さらに、中国の旅行IT企業で専門職を対象に行われた研究では、週2日の在宅勤務と週3日の出社を組み合わせても、コードの行数や人事評価に低下は見られず、離職率は33%低下しました。実験前には在宅勤務が生産性を下げると考えていた管理職も、終了後には認識を改めたことが紹介され、印象ではなく検証結果に基づいて判断する重要性が示されました。

 

 一方、フルリモートにはコミュニケーション不足や孤立感という弱点があります。トルコのコールセンターでは、月1日の出社機会を設けただけで生産性が7.8%向上し、離職率も約3分の1低下しました。出社時の何気ない会話から同僚とのつながりが生まれ、困ったときに助けを求めやすくなったことが背景にあると考えられます。また、別の研究では、週3日の在宅勤務で仕事満足度が最も高く、孤立感が最も低いという結果も示されました。

 

 講義後の質疑では、中長期的な人材育成やスキル形成、顧客との信頼関係、チーム全体の生産性に与える影響について質問が寄せられました。佐藤先生は、在宅勤務の中長期的な影響については、現時点では6~9カ月程度の短期的なエビデンスにとどまっており、人材育成や顧客との信頼関係などに及ぼす中長期的な影響や、チーム単位の効果は今後の研究課題だと説明しました。また、週4日在宅勤務した人は出社勤務の人よりも昇進率が低かったとの研究も紹介され、職場で姿が見えないことが評価に影響する可能性にも言及しました。一方、チームで働く専門職でも週2日程度の在宅勤務ではパフォーマンスの低下が見られないことから、現時点では週2~3日程度に適切なバランスがある可能性が示されました。

 

 講義を通じて、フル出社かフルリモートかを一律に選ぶのではなく、仕事の特性や個人差を踏まえて適切な組み合わせを探ることや、施策の効果を適切な方法で測定し、次の施策設計に生かすことの重要性が共有されました。

 

 

プログラム②

ケーススタディ 「人事戦略を描けるHRプロになりたい」

モデレート: パーソル総合研究所

 

 本コンソーシアム初の取り組みです。「自社のコアコンピタンスを見出す」「事業戦略を人材戦略につなぐ」「人事に不足する力を特定する」「ステークホルダーのニーズを捉え、選択する」という4つのテーマについて活発な議論が行われました。

(議論の内容上、詳細は非公開です)


 

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10月2日(金)の第4回研究会は、「デンマーク人の働き方と生産性(仮)」、

「AI時代に求められる『ワールドクラス人事』の人的資本経営~HRモダナイゼーション実態調査から紐解く、日本企業人事の変革論点」、「最新データで読み解く『人事部の現在地と次の一手』人事部トレンド調査2026」の3テーマで開催予定です。どうぞご期待ください。

 
 
 

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